アップダウンが続き、俺の身体は限界だったが八ヶ岳が俺のゴールを歓迎しているように思えた。最後のエードからは残り3キロ、ゴール地点でのアナウンスが聞こえた。コースも平坦となり、最後はまたしても女性第3位の選手とセクハラ走法で締めくくった。一緒にゴールしようと思ったが、彼女はゴール手前で仲間から花束を受け取り一緒に走り出した。これでは俺のゴールが目立たなくなると思い、ペースダウン、彼女から10秒遅れて両手を挙げ、喜びを身体中で表現した。申し込み時に書いたコメント「馬越峠に負けないぞ!」がアナウンスされ、それが現実になってうれしかった。

ピース

20キロ付近までは上りで、途中標高1910mの最高地点を通過し、今度は5キロ程下る。このあたりで20歳代の選手がすごいスピードで追い越して行った。このコースは下りを我慢してゆっくり走らないと後半、脚にくると聞いている。彼は大丈夫かなと心配していたら、また上りになった30キロ手前で嘔吐していた。霧も晴れて快晴になってきたところで最初の着替えポイント「32キロ稲子湯」に到着

スタート前
2002.5.12
 大会前日、仙台駅に7名の勇士?(守、府田、西田、出口進、井上、本多、今野)が集結し香さんと本多さんの奥さんに見送られ、旅行気分で親方とビールを飲みながら初めて乗る長野新幹線そして小海線乗り継ぎ、4時間ほどでJRの最高地点にある野辺山駅に到着した。受付を済ませ、選手説明会に参加。カーボパーティまで時間があったので、一旦ペンションに行くことになったが、送迎の都合がつかず歩いて行くことになった。高原野菜畑の中を重い荷物を持ちながら歩くのは結構きつかったが、高原に白い花をつけたヤマナシの木がすごく似合っていて心を和ませてくれた

フィニッシュ

感動の八ヶ岳

「後13キロだから頑張ろう!」と自分に言い聞かせ走り出すが脚は棒のようだ。そして89キロ地点で唖然とする、またしても急な上り坂だ!このコースは簡単にはゴールさせてくれない。90キロ地点での係員は冷たく、俺が「アーしんどい!」と言ったら何も言ってくれなかった。こういう時「あと10キロだからがんばって!」の一言でランナーは勇気付けられるのだが・・・。しかし俺を応援してくれるものがあった、それは雄大な八ヶ岳であった。

うどんだよ

しかし下っている時、お腹まで下ってしまった。内蔵の疲れか?いやこれは信州蕎麦を3杯食べたせいだろうか?トイレを探したが無い!野・・を覚悟したが適当な場所がない!結局87キロのエードまで我慢した。まっすぐトイレに駆け込み、痛い脚で3分もしゃがんでしまった。ここのエードではうどんが出される、全然食欲がなかったが半分ほどお腹に詰め込んだ。なんとビールもあったが後が心配で遠慮した。

峠のエードで走りきった安堵感から椅子に座り込んでしまった。冷却スプレーをかけても何も感じない。3分程休んでいたら追い越したはずの歩いていたランナーにボロボロ先を越されてしまった。ここで教訓、「馬越峠は歩いたほうがダメージも少なく、結果的にそのほうが速い。」「後は下りだからがんばろう!」と立とうとするが股関節と腰が痛くて立てない。何とか立ち上がり走り出すが急な下り坂に脚が悲鳴を上げた。それでも女性の第3位の選手に得意のセクハラ走法で下りきる。千曲川が流れ、八ヶ岳が顔を出した。

馬越峠にて

スポーツライターの
夜久さんと

高原!って感じするでしょ。

膝かんたん」のスタッフが脚のケアをしてくれた。お汁粉を食べ、長そでから半そでに着替えようとするが、なかなか脱げない!3分ロスする。シューズもトレイルからジョギングシューズに履き替える。稲子湯からは舗装されていて50キロ地点まで一気に下る。ここもスピードの出し過ぎは禁物だ!白樺の綺麗な40キロのエードでパチッ!

     ウルトラマラソンは身体に悪い


                俺が勤めている検査のS氏の協力を頂いた。

      
     

     

        CPK: 骨格筋の障害で上昇する。正常値50200

    CRP: 炎症性疾患や組織の破壊で上昇する。正常値0.3以下

        O: 肝機能や骨格筋の障害で上昇する。正常値10〜40

ゴール後ボランテアの中学生が完走メダルをかけてくれ、ドリンクを頂いた。「豚汁いかがですか?」と言われたが、とてもそんな食欲はなかった。帰りの電車まで1時間以上あったのでシャワーを浴びようと思ったが、少し離れている場所にあったので諦めた。洗面所で身体を拭き、なんとか着替えてそのまま横になった。20分程休んだら大分楽になり、食欲も出てきたので豚汁と蕎麦をごちそうになった。明日は仕事、朝一の長野新幹線で帰るため佐久平駅まで行かなくてはならない。ローカル線で1時間半の道のり、500mlの缶ビールを飲んだ。さぞかし美味しいだろうと期待したが、疲れ過ぎているせいかそれ程でもなかった。駅から宿までは荷物が肩に食い込んで、脚は棒のよう、長く感じられたが、宿の女将が俺のことを心配し、笑顔で迎えてくれた。これで本当に長い1日が終わった。翌朝、おにぎり弁当をサービスしてもらい有難かったが、タクシーがワンメーターで980円もしてブルーになった。9時に職場に着き、つらい仕事!

ラップタイム

10k

20k

30k

40k

50k

60k

70k

80k

90k

100k

予定

1:03

2:15

3:20

4:25

527

6:35

7:45

9:00

10.15

1120

結果

1:05

2:13

3:14

4:20

5:14

6:24

7:27

8:57

10.15

11:17

記録 11時間17分21秒

男子88位  総合91位

完走率

出走数

完走数

完走率

男子

662

446

70.3

女子

49

25

51

711

491

69.1

これからがこの大会のメインエベント、馬越峠だ!噂では聞いていたが本当に凄い上り坂が続く、ほとんどの選手が歩いている。ここで俺は「いままで歩かないでここまで来たのだから、ゆっくりでもこの坂を走ろう!」と馬鹿な決意した。山登りで鍛えた脚で何とか走り切り峠に到着した。

名物、信州そば

この辺でクラブの皆とすれ違う、声を掛けあったが皆元気そうだ。そこで気付いたのだが俺が一番前を走っている。(ペースが速すぎか?不安になる。)この大会は山道を走ることが多いためか応援が少ない。しかしこの辺には私設のエードが結構多く、大きな梅干、名物の野沢菜そしてアイスキャンディまでご馳走してくれた。(いままで食べたアイスキャンディで1番美味しかった!)また上り坂になり歩く人も多く見られるようになった。気温も22度以上まで上昇して暑い!ここまで脚と腰の疲労はあるが、これと言った痛みはなかったが、右の股関節がギシギシ痛くなってきた。(ここが痛くなったのは初めてである。)不安だ。無事70キロのゴール地点に到着、中学生のボランテアが渡してくれた冷たいおしぼりが本当にうれしかった。そして待望の信州そば!内臓も疲れているので食べられるか心配だったが、美味い!なんと3杯も(量は少ないが)食べてしまった。ウルトラマラソンは食べなければ完走できないが、食べ過ぎてもいけないと後で知ることになる。

薄暗い中、5時ちょうどに号砲が鳴る。とにかく最初はゆっくり走ることに心掛けた。府田、井上、進さん達と話しながら走る。キロ6分半のペースで、これでは遅すぎと判断し、少し前に出ようとするが道路が狭く思うように抜けない。3キロ地点でゼッケンが俺のひとつ後(700番)の桜井正康選手に声を掛ける。南郷の方で、昨年秋田のウルトラを走って今回が2回目らしい。来月にはサロマにも出場するそうだが、驚くことにいつも自家用車で寝泊りしながら移動するそうだ。(しかしサロマは遠いよな!)スタート前にトイレを済ましたのに早くも尿意をもよおす。大会の注意事項で「野辺山の高原野菜に立小便するな!」しかし我慢できずに畑でないところで済ます。(すっきり・・・)5キロ地点で今度はゼッケン701番の高橋邦明さんに声を掛ける。高橋さんは古川の歯科医師でウルトラの常連だそうで野辺山も何回も走っているそうで、「霧が掛かっていなかったら朝日を浴びた八ヶ岳と富士山がきれいに見えるんだよ」と教えてくれた。山好きの俺にとって悔しい限りであった。このあたりから林道になり、石ころがゴロゴロしているが今回のために買ったトレイルシューズが威力を発揮した。10キロのチェックポイントでは1時間5分、予定より少し遅れているが、これぐらい遅れるぐらいが完走の秘訣だそうだ。

大会当日2時半起床、3時朝食。昨夜のカーボパーティで食べ過ぎたこともあり食欲はなかったが、食べないと走れないと思い、ご飯一杯半を詰め込んだ。井上さんと同室の女性はなんか不気味な雰囲気であった。ウルトラランナーは変人が多いのだろうか?会場には340分頃到着し準備に取り掛かる。今回はこれでもか!というぐらいグッズに頼った。肩こり防止効果のある(チタンネックレス)、体中に(ファンテンパワーテープ)、膝のガードに(膝かんたん)、まめ防止に(ディクトン)、アミノバイタル2000mgを4袋、飲む酸素2袋、エードは充実しるが、もしものために(ピットインゼリー)。これで備えは万全。荷物を預け、最後に10分並んでトイレを済ませ、いざスタート地点へ!天候は濃霧で気温は11℃、少し肌寒いので長Tシャツにハーフスッパツそして手袋。ところが他の走友会のメンバーはウインドブレイカーを着ているではないか!(暑くなると思うがウルトラの先輩に忠告はできない。)

24時間テレビでおなじみ
坂本さんと

1730からカーボパーティ!参加者は200名程で乾杯と同時に皆ガツガツ食べ始めた。メニューはカレー,焼きそば、スパゲッテーがメインでウインナー、から揚げ、サラダ、フルーツ等。飲み物はソフトドリンクとビール。参加費1000円を払っているためか、量は結構あった。7時までの予定だったので、俺はゆっくり食べる作戦にして、最後にカレーで締める予定にしたら、なんとカレーが一番最初に売り切れてしまった!でも他の料理とビールを鱈腹頂いた。ペンションに戻り9時に就寝したが、緊張しているためか熟睡できなかった

ヤマナシの木

第8回 星の郷 八ヶ岳野辺山高原 100キロウルトラマラソン完走記

千曲川

この辺はリゾート地で松原湖周辺は別荘やゴルフ場が多い。フルマラソンの42.195キロを通過した時、「これから俺の未知の距離に突入!」ということで感動と恐怖で気が引き締まる思いがした。昨日電車で通った小海駅を通過しおにぎりとパンのある50キロのエード。レース前に完走のキーポイントはここで美味しくおにぎりを食べられるかどうかに懸かっていると思っていたので不安だったが、おかかのおにぎりを口にしてみると「美味い!」しかしお茶をゴクッと飲んだら熱くて吹き出してしまった。この辺からまたダラダラ上りとなる。俺と並走している選手にやたらと声が掛かる。Tシャツに「チーム89」とある、スポーツライターでウルトラマラソンの本の著者、夜久弘さんだ。俺の1歩後をピッタリ付いてくる、これは俺がペースメーカーにされているのだ。折り返し地点の58キロのエードも充実しており、ここでは野沢菜のおにぎりが美味しかった。一休みして走り出したら、また夜久さんが付いてきて、夜久さんのサポート隊が車で応援に来たので俺のカメラを渡しパチッ。60キロの私設エードでは夜久さんとツーショット。

ここは入浴可能で本当に
入ってる選手がいた。

稲子の湯